事業を後継者に引き継ぐ、あるいはM&Aで譲り渡す・譲り受ける——こうした場面で使える補助金があります。他の分野と違うのは、「いつ承継したか」と「いつ申請したか」の順序そのものが条件になる点です。この記事では、承継特有の注意点を整理します。
1. タイミングが条件になる
設備や販路の補助金は「これから何をするか」を書けばよいのですが、承継の場合は承継の時期そのものが要件に含まれることがあります。
- 「◯年◯月から◯年◯月までの間に承継した(する予定の)こと」という期間が定められることがある
- 承継前でも申請できる制度と、承継済みであることが前提の制度がある
- 承継の形(親族内承継・従業員承継・第三者へのM&A)によって対象になる制度が変わる
- 個人事業主の承継と法人の承継で、必要書類が変わることがある
つまり「補助金があるかどうか」で承継の時期を動かせる余地があるということでもあります。承継を検討し始めた早い段階で制度を見ておくと、選択肢が広く残ります。
2. 引き継ぐ側・渡す側で見るところが違う
| 立場 | 使いどころ | 準備しておくこと |
|---|---|---|
| 引き継ぐ側 | 新しい取組のための設備投資、システムの統合、専門家への相談費用 | 承継後に何を変えるのかを具体化しておく |
| 渡す側 | M&Aの仲介・デューデリジェンス等の専門家費用、譲渡に伴う整理 | 決算書・契約関係・許認可などの資料を整えておく |
| 共通 | 事業を継続するための費用 | 承継の時期と、承継の形を確定させておく |
引き継ぐ側の申請では、「承継しました」で終わらせず、承継を機に何を新しくするのかを書くことが求められる傾向があります。単に事業を引き継ぐだけでなく、そこから先の取組を支援するという趣旨の制度が多いためです。
3. 専門家への費用が対象になることがある
承継やM&Aは自力で完結しにくく、士業や仲介会社に依頼する場面が出てきます。こうした専門家への費用が対象経費に含まれる制度があります。
- 仲介手数料・デューデリジェンス費用・企業価値評価の費用など
- 登録された支援機関に依頼することが条件になっている場合がある
- 着手金と成功報酬で扱いが分かれることがある
- 契約のタイミングが交付決定より前だと対象外になりうる(他の制度と同じ原則)
最後の項目は特に注意が必要です。M&Aは話が動き出すと契約を急ぎがちですが、契約日が基準になるため、補助金を使う前提なら順序の確認が要ります。手続きの流れは補助金申請の流れで解説しています。
4. 準備に時間がかかる前提で動く
- 承継の合意そのものに時間がかかる(相手のある話)
- 決算書・株主名簿・契約書・許認可など、必要書類が多い
- 電子申請にはGビズIDプライムが必要で、取得にも時間がかかる
- 承継の時期が動くと、対象になる制度も変わることがある
他の分野より読めない時間が多いのがこの領域の特徴です。締切から逆算して間に合わない場合は、無理に今回の公募に合わせるより、次回を前提に準備を進めるほうが結果的に良い形になることもあります。
5. 相談できる窓口がある
事業承継は制度が複雑で、税務・法務が絡みます。各都道府県には事業承継の相談窓口が置かれているほか、商工会・商工会議所、認定経営革新等支援機関でも相談できます。補助金の話だけでなく承継そのものの進め方も含めて相談できるので、早い段階で使うと判断が速くなります。
まとめ
事業承継・M&Aの補助金は、承継の時期と申請の順序が条件そのものになる点が他の分野と異なります。引き継ぐ側は承継後の新しい取組を、渡す側は資料の整備を先に進めておくと動きやすくなります。専門家費用が対象になる制度もありますが、契約のタイミングには他の制度と同じ原則が効きます。募集中の制度は事業承継・M&Aカテゴリから確認してください。